2002.10.17記
觀 音 さ ま
〜 千手觀音 〜
今回は小難しいお話しは小休止して、私たちに馴染み深い「観音さ
ま」のお話しをしてみましょう。
「観音さま」と云えば「西国(さいごく)三十三ヶ所觀音霊場」が有名
です。この三十三ヶ所と云うのは、「法華経(ほけきょう)」と云うお経の
中の「普門品(ふもんぼん)第二十五巻」、つまり皆さんがよくお唱えす
る「観音経」に説かれている「三十三変化身」から発展してきました。
それは観世音菩薩が、悩み苦しむ人々を救って悟りを得させるた
めに、三十三の身に変じると云われています。
私たちがよく耳にする「觀音さま」のお名前は、「四国八十八ヶ所霊
場」の中のご本尊でもある「観世音菩薩」「千手觀音」「十一面觀音」な
どですが、実は数え切れないぐらいの「観音さま」がおられるのです。
『え〜っ!こんな観音さまがいたの〜!』と驚くことがあります。
例えば、「大明白身(だいみょうびゃくしん)觀音」「耶輸陀羅(やゆだら)菩薩」「寂留明(じゃくるみょう)
菩薩」「豊財(ぶざい)菩薩」などなど挙げれば切りがないですが、いかがでしょうか?
ご存知のお名前がありましたか?
もしご存知の「觀音さま」がありましたら、あなたはかなりの通ですぞ!
さて今回は、当「はすはな」のご本尊でもある「千手觀音さま」についてお話ししましょう。
正式には「千手千眼(せんじゅせんがん)観自在菩薩(かんじざいぼさつ)」と云い、インドでのお名前を
「サハスラ・ブジャ・アヴァロキテーシュヴァラ」と云います。
仏教では「六觀音」と呼ばれるものがあり、「千手觀音」はその中のお一人です。
この「六觀音」の思想は、中国の天台宗開祖である「智(ちぎ)」が始め
たものです。それは、「六道(りくどう)」と呼ばれる世界で苦しむ人々を救っ
て下さる「観音さま」がおられると云うことです。
「六道」とは、
「地獄(じごく)」 「餓鬼(がき)」 「畜生(ちくしょう)」
「阿修羅(あしゅら)」 「人(ひと)」 「天(てん)」
の六つの世界を、私たちは生まれ変わり、死に変わりしながら輪廻(りんね)
を繰り返していると云われます。
私たちは、それぞれの世界で苦しみを抱えながら生きています。この六つ
の一つ一つの世界に、それぞれ「観音さま」が配置され受け持たれています。
真言宗では以下のように配置されています。
@地獄界 ・・・ 聖觀音(しょうかんのん)
A餓鬼界 ・・・ 千手觀音(せんじゅかんのん)
B畜生界 ・・・ 馬頭観音(ばとうかんのん)
C阿修羅界 ・・・ 十一面觀音(じゅういちめんかんのん)
D人界 ・・・ 准胝觀音(じゅんていかんのん)
E天界 ・・・ 如意輪觀音(にょいりんかんのん)
この「六觀音信仰」は、わが国では平安時代頃から貴族を中心に、一般の人々にも浸透していきまし
た。そして、さらにこれが「六地蔵信仰」や西国の「三十三ヶ所霊場巡り」へと発展をしていったのでした。
お話しを元に戻しましょう。
先ほど「千手觀音」のインドのお名前は、「サハスラ・ブジャ」と云いましたが「サハスラ」とは「千の眼を
持つ」と云うことを表し、「ブジャ」とは「聖者」を意味します。
仏教は、その長い歴史の発展の中で、インドのヒンドゥー教に伝えられる「シヴァ神(しん)」を強く意識
していたと思われます。なぜなら、インドにおいて「サハスラ・ブジャ」の呼び名は、即ち「シヴァ神」だから
です。
「シヴァ神」は、他に「マヘ−シュワラ」「ナタラージャ」「ニーラカンタ」「シャン
カラ」などなど、千百十六の異名を持たれています。「千手觀音」のインド名、
「サハスラ・ブジャ」もその一つなのです。
日本の神道、仏教の信仰者の一部において「シヴァ神」は、「悪神・魔神」
のごとくに云われているのを聞くことがあります。ところが実は、仏教の中に
は「シヴァ神」が変化したものが数多くあります。
たとえば、「大自在天」「青頚觀音」「不動明王」「大黒天」などなどです。
「不動明王」は厄除けや障害打破などのご利益で、「大黒天」は商売繁盛
や財運などのご利益で、昔からたくさんの人々に親しまれてきました。
ヒンドゥー教などの影響力により、仏教も衰退をせざるを得ない時がありま
した。そこで仏教では、悪い言い方をすれば「シヴァ神」を悪者にすることに
よって、仏教の存続を賭ける必要がありました。
それだけ「シヴァ神」の影響力は、民衆に対して絶大的なものでした。
ところが、「シヴァ神」の秘密を知る仏教の先徳たちは、この神を抹殺する
ことは出来ませんでした。なぜなら「シヴァ神」を抹殺、否定することは、実は
自分たちの仏道修行を、宇宙の秘密を否定することになるからです。
周囲には、ヒンドゥー教の「シヴァ神」を否定することを表すことで、仏教と
ヒンドゥー教の差別化をし、内実は「シヴァ神」の姿かたちを変えて、その偉大さと秘密を残したのでした。
その一つが「千手觀音」なのです。
とは云え、長い歴史の中で中国などでの思想も取り入れられ、この日本では「千手觀音」即ち「シヴァ
神」そのものである、とは云えないかも知れません。
しかし、基本の姿は「シヴァ神」を始め、ヒンドゥー教の神々である、とは云えるでしょう。
この「千手觀音」のお姿は、お名前の通りに千本の手を持ち、その手の中に
一つ一つの眼をお持ちです。
仏像では、四十本の手にそれぞれの器物を持ち、背後に円光状の千の手と
それぞれの手に一眼を表しています。
頭の上にはさらに、福を喜ぶお顔や、やさしいお顔、悪を悲しむお顔など、
十一のいろいろなお顔があります。
さてご利益は、基本的に人々が望むものを与えて下さります。
なぜなら、その千の手は円満具足を、千の眼は天体の星を表します。それは、
全宇宙の惑星の統一を意味し、全ての神々と魔神の統率者であると云うことで
す。まさしく「宇宙の王さま」なのです。
それでは四十本の手に持たれておられる、それぞれの器物に表される功徳
についてお話ししましょう。
今回は、向かって右側、つまり「千手觀音」の左の手に持たれておられる物を
ご紹介しましょう。
第1の手 「日精摩尼(にっしょうまに)」 − 人々の心の闇を照らし、正しき進むべき道を照らし出す。
第2の手 「金剛杵(こんごうしょ)」 − 怨敵を摧くことが出来る。
第3の手 「金輪(こんりん)」 − 悪を打ち破り、不退転の心を培う。
第4の手 「紅蓮華(ぐれんげ)」 − 天上界の神々に生まれることが出来る。
第5の手 「榜はい(ぼうはい)」 − 獣などの難儀を除くことが出来る。
第6の手 「化仏(けぶつ)」 − 諸仏が常にそばに居られ、離れることがない。
第7の手 「宮殿(くうでん)」 − 仏さまや菩薩などの住まわれるところ。
第8の手 「宝珠(ほうじゅ)」 − 願いを思いのままに叶えることが出来る。
第9の手 「宝螺(ほうら)」 − 天上界の神々を呼び招くことが出来る。
第10の手 「玉環(ぎょくかん)」 − 善き召使いを得ることが出来る。
第11の手 「払子(ほっす)」
− 身の上に起きてくる障害を除くことが出来る。
第12の手 「軍持(ぐんじ)」
− 梵天(ぼんてん-仏教の護法神)に生まれることが出来る。
第13の手 「楊柳(ようりゅう)」 − 病難を除くことが出来る。
第14の手 「宝篋(ほうきょう)」 − 死後の幸福を得ることが出来る。
第15の手 「紫蓮華(しれんげ)」 − 諸々の仏さまを見ることが出来る。
第16の手 「宝弓(ほうきゅう)」 − 地位や名誉を増すことが出来る。
第17の手 「五色雲(ごしきうん)」 − 長寿や延命を得ることが出来る。
第18の手 「羂索(けんざく)」 − 良き縁を結び、悪を縛ることが出来る。
以上、左の手に持たれておられる十八の功徳についてでした。この功徳は、またそれぞれの名前を持
たれた「觀音さま」として表されております。
このお話しと、残りの二十二の功徳については次回に譲ることにしましょう。
それでは今回はこの辺りで終わりにしますが、最後に「千手觀音」をお呼びする「真言」をご紹介してお
きましょう。
千手觀音小咒 『オーム・バザラ・ダラマ・キリーク』
觀音さま 〜千手觀音
〜 終わり
 |
進化のための
破壊と創造の神
シヴァ |
 |
餓鬼の世界で
苦しむ人々を救う
千手觀音 |
 |
| シヴァのファミリー |
 |
左手に持たれる
18の功徳 |
 |
| 千手觀音 |